1. はじめに:不登校の影にある“自己肯定感”の低下
お子さんが学校に行けなくなったとき、親として一番に浮かぶのは「どうして?」「このままで大丈夫?」という不安かもしれません。
日々の様子を見ていると、「元気がないな」「笑わなくなったな」と感じる場面も増えてきたのではないでしょうか。
そんなとき、耳にすることが多くなるのが「自己肯定感」という言葉です。
自己肯定感とは、「自分はこれでいいんだ」と思える気持ちのこと。
でも、学校に行けなくなった子どもたちは、この“自分を認める気持ち”がどんどん小さくなっていくことがあります。
「自分はダメだ」「どうせできない」「みんなはちゃんとしてるのに……」
こうした思いが心の中に広がっていくと、ますます動けなくなってしまうんですね。
でも、安心してください。
お子さんの自己肯定感を育てていくことは、家庭の中で少しずつできることなんです。
この記事では、不登校の子どもが自分を取り戻していくために、親としてどんな関わりができるのかを一緒に考えていきます。
2. 自己肯定感って何?なぜ不登校と関係があるの?
「自己肯定感」という言葉、最近はいろいろな場面で耳にしますよね。
でも、あらためて説明するのは意外と難しいものです。
簡単にいうと、自己肯定感とは「自分をありのまま受け入れられる気持ち」のこと。
勉強ができるとか、スポーツが得意とか、そういう条件付きの評価ではなく、
「できないことがあっても、それでも自分には価値がある」と思える心の土台です。
不登校の子どもたちは、この自己肯定感が大きく揺らいでいることがよくあります。
たとえば、こんなふうに思っていることがあるかもしれません。
- 「みんなはちゃんと学校に行ってるのに、自分だけ行けてない」
- 「親に迷惑をかけている気がする」
- 「どうせ頑張ってもムダだ」
こうした気持ちが積み重なっていくと、少しずつ自分を否定するようになり、
何かを始める気力や勇気が出てこなくなってしまうのです。
また、学校という場は、どうしても「周りと比べられる」環境でもあります。
勉強の成績、友達付き合い、先生との関係……
そうしたなかで傷ついた経験があると、「自分はダメなんだ」と思い込んでしまうのも無理はありません。
ただ、ここで大事なのは、「自己肯定感は取り戻すことができる」ということ。
もともと自己肯定感が低かった子もいれば、環境や出来事の影響で下がってしまった子もいます。
でも、周りの大人の関わり方次第で、少しずつ回復していく力を持っているのです。
3. 自己肯定感が下がるとどうなる?子どものサインとは
自己肯定感が下がっているとき、子どもはどんなふうに変化するのでしょうか?
必ずしも「助けて」と言ってくれるわけではないからこそ、まわりの大人が気づいてあげたいポイントがあります。
ここでは、親御さんが日常の中で見つけやすい“サイン”をいくつかご紹介します。
●「どうせムリ」「自分にはできない」と言うことが増える
以前は挑戦していたことも、「ムリ」「やっても意味ない」とあきらめモードになることがあります。
これは失敗を避けようとする防衛反応でもあり、「もう傷つきたくない」という気持ちのあらわれです。
●好きだったことに興味を示さなくなる
ゲームや本、アニメなど、以前は夢中だったことにも無関心になる場合があります。
気持ちが沈んでいるとき、自分の“好き”を感じる心の余裕がなくなってしまうことがあるんですね。
●人との関わりを避けるようになる
家族との会話が減ったり、LINEの返信をしなくなったり……
人とのやりとり自体に気力を使えない状態になっていることもあります。
●過剰に謝ったり、否定的な言葉が増える
「ごめんね」「自分のせいだよね」「ほんとにダメな子でごめん」など、
自分を責めるような発言が多くなることも、自己肯定感の低下を示すサインのひとつです。
こうした変化が見られたとき、親としては心配になりますよね。
でも、「なんでそんなふうになっちゃったの?」と問い詰めたり、「もっとがんばりなさい」と励ましたりするのは、逆効果になってしまうこともあります。
大切なのは、「気づいているよ」「あなたを大切に思っているよ」というメッセージを、静かに・温かく伝えていくこと。
子ども自身も「こんな自分じゃダメだ」と感じているからこそ、否定されずに受け入れてもらえることが、何よりの支えになるのです。
4. 自己肯定感を育てる親のかかわり方とは?
自己肯定感が下がっているとき、子どもは自分に対してとても厳しくなっています。
「どうせ自分なんか…」と心の中で何度もつぶやいているかもしれません。
そんなとき、まず必要なのは「そのままのあなたでいいんだよ」というメッセージです。
とはいえ、何か特別なことをしなくても大丈夫。
日常の中で、親としてできることはたくさんあります。
● 否定しない・評価しない・比べない
「なんでできないの?」「ちゃんとやりなさい」「○○ちゃんはやってるのに…」
こうした言葉は、知らず知らずのうちに子どもの心を傷つけてしまいます。
比べたり評価したりせず、「あなたはあなたのペースでいい」と伝えていくことが大切です。
● 小さな行動に「気づき」と「ありがとう」を伝える
たとえば、少しでも自分から話しかけてくれた、食器を片づけてくれた、ペンを持った……
そんな何気ない行動に「気づいたよ」「ありがとう」と伝えてみてください。
「見ててくれたんだ」と感じるだけで、子どもは少しホッとします。
自分が誰かの役に立っていると実感できることが、自己肯定感を育てる第一歩になります。
●「あなたがいてくれてうれしい」と言葉にする
学校に行けない日々が続くと、子ども自身が「自分は家に迷惑をかけている」と思い込んでしまうことがあります。
だからこそ、「あなたがいてくれてうれしいよ」「あなたと一緒に過ごせてよかった」という気持ちを、あえて言葉にして伝えてあげてください。
存在そのものを認められることが、子どもにとっては何よりの安心につながります。
● 自分を責めている親御さんへ
「私の育て方が悪かったのかな…」
「もっと早く気づいていれば…」
そんなふうに、自分を責めている親御さんも多いと思います。
でも、この記事を読んで「何かできることはないか」と考えているあなたは、
すでにお子さんにとって、とてもあたたかい存在です。
完璧でなくてもいいんです。
子どもの前で笑顔を見せたり、失敗を一緒に笑い合えたりするだけで、
少しずつ自己肯定感は育っていきます。
5. 自信を取り戻すには“安心できる環境”がカギ
自己肯定感を育てていくうえで、もっとも大切なのは「安心できる場所」があることです。
それは決して特別な環境ではなく、親が少し気を配ることでつくっていけるものなんです。
● 無理に外の世界へ戻そうとしなくていい
「そろそろ学校に行ったほうがいいんじゃない?」
「一日くらい行ってみたら?」
そんなふうに声をかけたくなる気持ち、よくわかります。
でも、心が不安定なときに無理に外へ向かわせると、逆に“失敗体験”になってしまうこともあります。
まずは家の中で、「ここなら安心して過ごせる」「自分らしくいていいんだ」と思える時間を大切にしてあげてください。
●「好きなこと」に没頭できる時間も大切
ゲームでも、アニメでも、お絵描きでも、好きなことがあるなら、それは心のエネルギー源です。
何かに夢中になっている時間こそ、「楽しい」「できる」「これが好き」というポジティブな感情が生まれる貴重なチャンス。
「そんなことしてないで勉強しなさい」ではなく、
「今はこれを大事にしてるんだな」と受けとめてあげてください。
● 勉強も“できる”を感じられることが大事
不登校になると、勉強からも気持ちが離れていきがちです。
それでも、「ちょっとやってみようかな」と思えるきっかけがあれば、自信を取り戻す小さなステップになります。
大切なのは、ペースも内容も「今のその子に合ったもの」であること。
わからないところを責められたり、急かされたりすると、すぐに心が閉じてしまいます。
「わかった」「できた」「これなら続けられそう」
そんな実感が持てる環境こそが、自信を育てる土台になるんですね。
こうした安心の土台を支えてくれる存在のひとつが、信頼できる“第三者”です。
次の章では、家庭教師のような外部サポートがどう役立つのかをご紹介していきます。
6. 家庭教師という“第三者”が心を開くきっかけに
親がどれだけ寄り添っても、どうしても届かない心の部分ってありますよね。
そんなときに力を発揮するのが、信頼できる“第三者”の存在です。
家庭教師というと、勉強を教える人というイメージが強いかもしれません。
でも、不登校のお子さんにとってはそれ以上に、「気持ちをわかってくれる大人」「安心して関われる人」としての役割がとても大きいんです。
● 勉強よりもまず“心のつながり”を大事に
実際、私がオンラインで家庭教師をしていると、人見知りのお子さんでも初回からポツポツと話してくれることがよくあります。
はじめは「何が好き?」という話から始めることが多いんです。
アニメでも、ゲームでも、動物の話でも、その子が興味を持っているものに耳を傾けて、「それ、いいね!」と返していく。
そうすると、少しずつ「この人は自分のことをちゃんと見てくれてる」と感じてくれるようになります。
あるお母さまからは、
「普段はほとんどしゃべらない子なのに、先生とは楽しそうに話していて驚きました」
と感動の声をいただいたこともありました。
●「素直に言ってくれてありがとう」が信頼のきっかけに
勉強のことも、「わからないって言ってくれてありがとう」と伝えるようにしています。
子どもたちにとって、「わからない」って、恥ずかしいことだったり、怒られることだったりすることがあるんですよね。
でも、私にとってはそれを素直に言ってくれることこそ、すごく大事で嬉しいこと。
そうやって小さなやりとりの積み重ねの中で、「勉強=イヤなもの」というイメージが、少しずつやわらかくなっていくのを感じます。
● 勉強は“できるようになる”ためじゃなく、“自信を取り戻す”ために
家庭教師の時間は、ただ学力を上げるためだけの時間ではありません。
「自分は話しても大丈夫」「わからないって言ってもいい」「ちょっとずつでも進んでる」
そんなふうに、自信を少しずつ取り戻していく時間でもあるんです。
安心できる関係のなかで「わかった!」「できたかも!」という小さな成功体験を重ねることは、
不登校のお子さんにとって、とても大きな意味があります。
7. まとめ:子どもが“自分を好きになる”その日まで
学校に行けない日々が続くと、「このままで大丈夫なのかな…」と、親として不安になるのは当然のことです。
でも、不登校は「何もしていない時間」ではありません。
お子さんは今、外からは見えにくい心の成長を、少しずつ積み重ねているところです。
自己肯定感は、今日すぐに高まるものではありません。
でも、「あなたはそのままで大丈夫だよ」というメッセージが、日々のやりとりの中で少しずつ伝わっていけば、
お子さんの中に、「自分を信じてみようかな」という芽が生まれてきます。
焦らなくて大丈夫です。
比べなくていいんです。
まずは、親御さん自身が「私も私でいいんだ」と思えるように、どうかご自身のことも大切にしてくださいね。
お子さんが“自分を好きになれる日”は、きっと少しずつ近づいています。
もし「どう関わったらいいかわからないな」と感じたときには、
家庭教師のような外からのサポートを取り入れてみるのもひとつの方法です。
安心できる関係の中で、小さな自信を取り戻していくお手伝いができれば嬉しいです。


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