1.はじめに:内申書のこと、気になりますよね
お子さんが学校に行けなくなって、ふと心配になるのが「内申書ってどうなるんだろう」ということではないでしょうか。
「内申書に不登校って書かれてしまうのかな?」
「欠席が多いと評価がつかない?」
「このままでは受験に不利になってしまうんじゃ…」
そんなふうに思って検索された方もいらっしゃるかもしれません。
実際、内申書は高校受験や進学の場面で使われることが多いため、不登校の影響があるのかどうかは、とても気になるところですよね。
ですが、ご安心ください。
不登校だからといって、すべてのチャンスが閉ざされてしまうわけではありません。
この記事では、
・内申書に実際どんな影響があるのか
・不登校の状態でも評価されることはあるのか
・親としてできるサポートは何か
といった内容を、できるだけわかりやすくお伝えしていきます。
不安な気持ちを少しでも和らげられるように、情報と一緒に気持ちの整理にもつながる記事を目指しました。どうぞ、ゆっくり読み進めてみてくださいね。
2.内申書って何?基本をおさらい
内申書(正式には「調査書」)とは、中学校の先生が作成する書類で、高校に出願する際に提出するものです。お子さんの学校生活の様子や学習状況を、第三者である高校の先生に伝える役割を持っています。
どんな内容が書かれるかというと、おもに以下のような項目です。
◆ 内申書に書かれる主な内容
- 各教科の成績(通知表のような数値評価)
- 出欠の記録(欠席・遅刻・早退など)
- 学校生活の様子(委員会活動や部活動、行事への参加など)
- 特記事項(個別の配慮が必要な場合など)
このなかでも、とくに多くの保護者が気になるのは「成績」と「出欠」の部分だと思います。
◆ 評定(成績)はどうつけられるの?
教科ごとの成績(評定)は、テストの点数だけでなく、授業態度や提出物、発表などを総合的に見て決まります。
そのため、学校に出席できていない場合は、「評価できない」として“評価不能”になるケースもあります。
とはいえ、「必ず評価不能になる」というわけではありません。先生が提出物や家庭での学習状況などから評価をつけてくれる場合もあります。
◆ 出席日数が少ないと、内申書に影響する?
出席日数の欄には、実際の欠席や遅刻の記録が書かれます。ただし、出席が少ないこと=自動的に悪い評価というわけではありません。
たとえば、フリースクールやオンライン学習など、学校以外での学習に取り組んでいることがあれば、その努力が伝わるように書いてもらえる場合もあります。
また、高校によっては「出席日数」よりも「学力」や「意欲」を重視するところも増えてきています。
内申書はたしかに大切な書類ですが、それだけですべてが決まるわけではありません。
このあとは、不登校が実際にどのように内申に影響するのか、もう少し詳しく見ていきましょう。
3.不登校が内申書に与える影響は?
お子さんが学校に行けない期間が続くと、どうしても「成績がつかないのでは?」「受験で不利になるのでは?」という不安が出てきますよね。
この章では、不登校がどのように内申書に反映されるのかを見ていきます。
◆ 評定が「つかない」場合もある
まず、各教科の評価についてですが、学校での授業に出席できていない場合、評価をつけるための材料が不足するため、「評価不能」とされることがあります。
この「評価不能」は、「評価できないため、評定(1〜5の数字)がつけられない」という意味です。
ただし、これはすべての教科に必ず当てはまるわけではありません。
たとえば、前期は登校できていて後期から不登校になった場合は、前期の取り組みをもとに後期の評価がつけられることもあります。
また、家庭での学習記録や提出物などがあれば、それをもとにある程度の評価をしてもらえるケースもあります。
◆ 出席日数が記載されるのは確か
内申書には欠席日数が記載されますので、不登校の期間がそのまま反映されます。
「この欠席日数を見て、合否に響くのでは?」と心配される方も多いと思いますが、すべての高校が欠席日数だけで判断しているわけではありません。
たとえば、
- 不登校になった理由や事情を丁寧に説明できているか
- その後どんなふうに学びを続けてきたか
- 受験時点での学力や意欲がどのくらいあるか
など、もっと広い視点で見てくれる学校もあります。
◆ 内申書そのものが「出ない」ことはない
「内申書が出してもらえないのでは?」という心配をされることもありますが、公立中学校は義務教育の一環として、基本的にはすべての生徒に対して内申書(調査書)を作成します。
ですので、「不登校だから調査書がもらえない」ということは、まずありません。
ただし、評価不能が多くなってしまうと、内申点を重視する学校では厳しくなる場合もあります。そうした場合には、出願先の高校の選び方や受験方法を工夫することが必要です。
不登校であっても、すべてがマイナスに働くわけではありません。
今の状況を丁寧に伝えること、そしてその中でどんなふうに学んでいるかを示すことがとても大切です。
4.不登校でも評価されることはある?
「うちの子、ずっと学校に行けていないけど、何も評価してもらえないのかな…」
そんなふうに感じている親御さんもいらっしゃるかもしれません。
でも実は、不登校の状態でも、お子さんの努力や学びの様子がしっかり評価されるケースはあります。
ここでは、どんなふうに評価につながるのか、いくつかのパターンをご紹介します。
◆ 家庭での学習が評価につながることも
たとえ学校に通えていなくても、家庭でテキストやドリルに取り組んでいたり、オンライン教材で学習を続けていたりする場合、その努力を担任の先生に伝えることで、評価の対象になることがあります。
たとえば、
- 自主的に提出物を出している
- 家庭学習ノートを継続している
- Zoomなどでの授業参加や、フリースクールのレポートがある
こうした記録や取り組みは、「学習に取り組んでいる証拠」として先生の判断材料になります。
◆ フリースクールや外部支援も評価対象に
お子さんがフリースクールに通っている場合、その活動内容が学校と連携されていれば、内申書に反映されることもあります。
たとえば、
- 通っている時間帯や頻度
- どんな学習や活動に参加しているか
- 先生との関わりや、社会性の育ちなど
これらの様子を学校に報告し、担任と共有しておくことが大切です。
◆ 親が「伝える役」を担ってもOK
不登校のお子さんにとって、学校とのやり取りはとてもハードルが高く感じられるものです。
そんなときは、保護者の方が先生との橋渡し役となって、
「最近はこういう学習をしているようです」
「こんな本を読んで、自分なりにまとめていました」
「今日は〇〇の勉強に30分集中して取り組めたようです」
といった日々の小さな取り組みを共有していくことで、先生もお子さんの頑張りを把握しやすくなります。
◆ 評価されるのは「行けるかどうか」よりも「どう過ごしているか」
学校に行けているかどうか、ということだけが評価の基準ではありません。
今の状況のなかで何ができるか、自分のペースでどう取り組んでいるかも、大切な評価の視点になります。
ですから、不登校だからといって、「うちの子は何も見てもらえない」とあきらめる必要はないのです。
次の章では、受験のときに高校側が内申書をどう見ているのかについて、さらにくわしくお伝えしていきます。不登校でも進路はしっかり開かれていますよ。
5.高校受験では内申書をどう見ているの?
不登校の子どもをもつ保護者の方から、よくこんな声を聞きます。
「内申がないと、どこにも受からないのでは?」
「推薦は無理でも、一般入試なら大丈夫?」
「通信制以外の選択肢ってあるの?」
高校受験ではたしかに内申書が使われますが、すべての学校が“内申点重視”というわけではありません。学校によって評価の仕方や重視するポイントは少しずつ違っています。
◆ 推薦入試は「内申」が重視されやすい
推薦入試では、出願の条件として「一定の内申点」が求められることがあります。たとえば、「3年間の合計評定が〇点以上」といった基準がある学校もあります。
この場合、不登校による評価不能が多いと、出願そのものが難しくなることもあります。
ただし、学校や地域によっては校長推薦や自己推薦の制度があり、「内申だけでなく、本人の意欲や活動内容を重視します」と明記されているケースもあります。
◆ 一般入試では「当日の学力」を重視する学校も
一方、一般入試は当日の試験での点数が合否を左右するケースが多く、「内申点は参考程度」としている学校も少なくありません。
特に私立高校や単願推薦(専願)などでは、面接や作文などを通して本人の人柄や熱意を見てくれる学校も増えています。
不登校を経験したからこそ、今どんな思いで進学を考えているのか。そういった背景にしっかり耳を傾けてくれる学校もあります。
◆ 通信制・単位制・定時制という選択肢
もし現在の状況では全日制の高校が難しいと感じている場合でも、選べる道はたくさんあります。
- 通信制高校:自分のペースで学習でき、在宅中心でもOK。
- 単位制高校:必要な科目を選択して、自分に合ったスケジュールで学べる。
- 定時制高校:夜間や午後からの授業で、少人数の落ち着いた環境。
こうした高校の多くは、内申書よりも本人のやる気や希望に目を向けてくれる傾向があります。
◆ 高校側が見ているのは「これから」
内申書にはたしかに不登校の履歴が記載されるかもしれません。でも、高校の先生たちが本当に知りたいのは、
「なぜ不登校だったのか」ではなく
「今、どんな気持ちで進学を考えているのか」
という部分です。
面接で正直に話した生徒が、しっかり受け入れられている例もあります。過去だけでなく、「これからをどう過ごしたいか」に目を向けてくれる高校はたくさんあります。
6.親としてできる内申サポートの工夫
お子さんが学校に行けない時間が長くなってくると、「このまま何も伝えられずに内申がつかないのでは…」と不安になりますよね。
でも、保護者の方にしかできないサポートもたくさんあります。
学校とのやりとりがむずかしいお子さんに代わって、今のがんばりや状況を“ていねいに伝える”こと。それが内申書に間接的に影響することもあるんです。
◆ 担任や学校との連絡は、あいさつだけでもOK
不登校が続いていると、学校と距離ができてしまいがちです。
でも「家庭では元気に過ごしています」
「最近は通信教材に取り組んでいます」
といった、ちょっとした近況報告だけでも十分です。
先生にとっても「まったく連絡が取れない」状態より、お子さんの様子を知ることができるだけで、記録や評価の参考になります。
負担に感じない範囲で、メールや連絡帳、保護者面談などを活用してみてください。
◆ 学習や活動の記録をとっておくと◎
学校に通っていなくても、
- 家庭でやった勉強
- フリースクールや習い事での活動
- 読んだ本や自分で書いた感想文
こういったことを簡単にメモしておくだけで、あとから「こんなことを頑張ってきました」と伝えやすくなります。
とくに評価の参考になるのは、提出物や学習レポートなど、目に見える“記録”です。
スマホで写真に撮っておいたり、カレンダーに〇をつけておいたり、かんたんな方法でOKです。
◆ フリースクールや支援機関との連携も有効
お子さんがフリースクールに通っている場合、学校とその情報を共有しておくと、内申書に反映されることもあります。
また、自治体の教育支援センター(適応指導教室)など、公的な機関とつながっていることで、担任や校長先生との連携がスムーズになるケースもあります。
「学校と話すのは緊張する…」という場合は、そういった支援先に間に入ってもらうのもひとつの方法です。
◆ 評価より「理解されること」が大切
内申の数字を上げることよりも、まずは「この子が今、どんなふうに過ごしているのか」を学校に理解してもらうことが大事です。
そして何より、お子さん自身が「ちゃんと見てもらえている」と感じられることが、次の一歩への力になります。
親としての働きかけが、その土台をそっと支えてくれるはずです。
体的な答えをお伝えしていきます。
7.よくある質問と不安への答え
不登校のお子さんを支えるなかで、保護者の方からよくいただくご相談や不安の声があります。
ここではその一部をQ&A形式でまとめました。
Q.中3の2学期から不登校。もう内申はどうにもならない?
A.いいえ、「これからできること」はまだあります。
たとえば、それまでの出席期間でついた評価はそのまま内申書に反映されますし、現在も家庭学習を続けているようであれば、その様子を担任に伝えることで評価の対象になることもあります。
また、志望校によっては当日の学力や面接を重視するところもあります。大切なのは「どうにもならない」と決めつけず、今の時点からできる工夫をしていくことです。
Q.ずっと評価不能だと、高校は受かりませんか?
A.受かる可能性は十分にあります。
たしかに評定がつかない教科が多いと、推薦入試は不利になることがあります。でも、一般入試で学力重視の学校を選んだり、単位制・通信制など内申より意欲や活動を評価してくれる学校を探せば、しっかり進路を選んでいけます。
実際に、不登校経験のある生徒が合格している例はたくさんあります。
Q.出席日数がゼロでも、内申書って書いてもらえる?
A.はい、基本的には作成されます。
公立中学校にはすべての生徒に対して調査書(内申書)を作成する責任があります。たとえ出席日数がゼロでも、在籍している以上、内申書が作られないということはありません。
評価不能の教科が多くなる可能性はありますが、全体が「空白」になることはありません。
Q.面接で「なぜ不登校だったの?」と聞かれたらどうすれば?
A.無理に詳しく説明しなくても大丈夫です。
面接では「今どんな気持ちで高校に行きたいのか」「どんなふうに過ごしたいのか」といった“これから”の姿勢を伝えることがとても大切です。
「当時は体調を崩していたが、今は学び直したい気持ちが強いです」など、前向きな気持ちが伝われば、それだけで十分です。
Q.親として、どこまで担任に伝えたほうがいいの?
A.日常の様子や学習状況は、できる範囲で伝えておくと安心です。
無理に詳しい家庭事情まで話す必要はありませんが、
「家庭では勉強を続けています」
「最近○○に取り組んでいます」
といった具体的な情報があると、先生も評価や記録をしやすくなります。
必要であれば、フリースクールや支援機関と連携しながら情報共有していくのもよい方法です。
不登校の状況は、お子さん一人ひとり違います。だからこそ「どうすればいいのか」が見えづらく、不安になってしまうのも当然のことです。
でも、実際にはいろいろな道があり、その子のがんばりや想いを受けとめてくれる高校もたくさんあります。
8.まとめ:内申だけがすべてじゃない
お子さんが学校に行けなくなったとき、進路や受験のことまで考える余裕なんて、なかなか持てないものですよね。
でも、少しずつ日常が落ち着いてくると、「このままで大丈夫なのかな」「進学できるのかな」と、将来のことが心配になってくる…。それは、どの親御さんにとっても自然な気持ちだと思います。
この記事では、不登校と内申書の関係について、
- 内申書の基本的なしくみ
- 不登校による影響とその背景
- 評価される可能性や工夫の方法
- 高校側が大切にしている視点
- 親としてできるサポートや考え方
をお伝えしてきました。
たしかに、不登校であれば、評価が難しい教科が出てくることもあります。出席日数の欄に、長い欠席の記録が載ることもあるかもしれません。
けれど、それだけでお子さんの価値が決まってしまうわけではありません。
◆ 内申書は「参考資料」のひとつ
受験において、内申書はたしかに使われますが、それはあくまでも“参考のひとつ”です。
どんな環境で、どんな背景があって、いまどんな気持ちで進学を考えているのか――
そうしたことを、きちんと見てくれる高校もたくさんあります。
お子さん自身が、自分の歩幅で少しずつ前に進もうとしていること。
そして、そんなお子さんを支えながら、一緒に悩み、考えている親御さんがいること。
そのこと自体が、すでに大きな力になっているのだと思います。
◆ 大丈夫。進める道は、必ずあります
不登校の経験があっても、自分のペースで学びなおしたり、未来を描いたりしている子はたくさんいます。そして、そうした子どもたちを迎え入れようとする学校や先生も、確実に増えてきています。
「うちの子に合う学校はどこだろう」
「今できることを、少しずつ重ねていこう」
そんなふうに、焦らずに考えていけば大丈夫です。
必要なのは、“完璧な内申”ではありません。
必要なのは、子どもが安心して進んでいける道を、一緒に探してくれる大人の存在です。
このページが、そのお手伝いの一歩になれたらうれしいです。
そして、どうかあなた自身の心にも、やさしさと安心がありますように。
ここまでお読みいただき、ありがとうございました。


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